2023年に製造部門に入社した前原さんは、同世代の同僚もいないなか最年少として奮闘している。担当するのは、キョウドウでは小型に分類される洗浄機械。食品工場や農場で使われる、50~60センチ四方のコンテナやカゴを洗うのに利用されるものだ。
現在は独り立ちし、製造の全工程を任されている前原さんだが、特に製造業に興味があったわけではないという。むしろ製造業は上下関係が厳しく、苦手とする仕事以外の付き合いも多いだろうと、覚悟もしていたそう。それでも製造業を選んだ理由は、ある意味自分自身をよくわかっていたからかもしれない。
「不真面目だけど、根っこまでは不真面目ではない」と自己評価する前原さん。なぜ彼は自分自身をそう分析するのか。その理由は過去の苦い経験の克服にあった。
(インタビュー実施:2024年11月)
製造業に興味があったわけではなかった。身近にあったから社会に出る1歩に選んだ。
もともと製造業に興味があったわけではないんです。自宅から近い職場を探していて、地元が工業地帯だったので、自然と製造業になったという感じ。自分の性格からして、働き続けるためには通いやすさが一番重要だと思いました。ものづくりは苦手でもなかったので、何となくできるかなと。
キョウドウを選んだ理由も、家から近かったからです。あとは職場の雰囲気がわかりやすかったこともありますね。キョウドウともう一社迷った会社があって、そっちの方が自宅からは近かったんです。でも、社内の雰囲気とか環境とかがわかる写真が全然なくて。自分が働くイメージがしやすかったのでキョウドウに決めました。
職人気質、仕事終わりの飲み会。覚悟はしてたけど、全然違った。
キョウドウに入って意外だったのは、親しみやすい人ばかりだということと、飲み会がほとんどないこと。製造業って、職人気質の怖い先輩ばかりを想像しますよね。でも、全くそういうことはなくて、みんなとても優しく接してくれます。特に直属の上司はいつも自分のことをいじってくれて、和ませてくれるんです。30以上年下なのに、こっちのことをすごく気にしてくれて、とても感謝しています。仕事の教え方も自分に合っているというか、説明をしてくれたあとに、1回一通り全部やらせてくれるんです。そのあとで、間違えている部分や注意した方がいいポイントを教えてくれる感じ。小間切れに教わるより、流れがつかめている方がわかりやすくて、頭にも入るんですよね。
それと、飲み会がないことは本当に意外でした。社会人になったら、仕事終わりに飲み会に付き合わなきゃいけないのかなって思っていたんですが、そんなこと全然なかったです。みんな仕事が終わったらさっと帰る感じで、あぁ、それでいいんだって(笑)自分もさっさと家に帰りたいタイプなんで、とても心地いいですね。
「ちゃらんぽらん」な自分だけど、製品を完成させ、社会の一員としての実感がもてた
はじめて製造を一から全部任されたときは、正直に言うと、しんどかったです。周りの人がやっていることが、自分にできる気がしなかった。製造工程には溶接や切削といった加工工程から、組立、電気配線、配管加工まで多数の技術が必要だからです。でも、仕事だからやらなきゃいけない。お給料もらっているんで。だから、わからないことは自分から積極的に聞きに行って、できない事を埋めながら進めました。周りの先輩方もやさしくて、ご自身の作業をしながら自分のことを見守ってくれるんです。それでときどきアドバイスもくれて。そうやって手探りで最初の製品を完成させましたね。そこでやっと社会の一員になれた気がしました。
夢に挫折し、やりたいことがなくなった。でもやらなきゃいけないという思いはあった。
実は、高校を出てから2年間働かずにいた時期があるんです。それまで英語教師になりたくて、英検2級も取得して頑張ってたんですが、挫折してしまいました。そのあとは追いかけていた夢がなくなり、何をしていいのかわからなくなって…… 毎日家で過ごしていると、だんだん家族の視線が痛くなるんですよね。家事とかはしてましたけど、このままじゃだめだなとだんだん思うようになりました。結構、何もしないというのも辛いことなんです。社会の役に立てていないというか。当時、同じような友だちもいて、そいつとも「このままじゃまずいな」ってよく話してたんです。基本、ちゃらんぽらんで追い詰められないと行動できないタイプなんですよね。だから、こうして仕事をしていることは自分にとって社会の一部になれているという感覚なんです。これまでは自分の好きなようにやってこられましたが、仕事を始めてからは、給料をもらって社会の一部を担っているという責任感がもてるようになったと思います。
苦手なことはある。でも逃げずに工夫して乗り切る方法を考える。
いま苦戦しているのは、部品のサイズや組み立てる位置を計算して割り出す作業ですね。基本的に製品のマニュアルはあるんですが、お客さまから注文いただいたサイズに仕上げるためには、製品一つひとつのサイズを調整しなければならないんです。例えば、切った部品を装着する位置とか部品を曲げる角度、穴を空ける場所です。製品全てを同じ寸法通りに作るわけではないので、その都度サイズや位置を割り出す作業が必要になります。この計算作業が難しくて、どう乗り越えようか考え中です。
苦手を克服したことでいうと、朝起きることは何とかなってます。社会人になって、毎朝ちゃんと起きなきゃいけないというのは最初大変でした。習慣にしちゃえばいいと思ったので、休みの日も平日と同じ時間に起きるようにしてます。それは入社からいまもずっと続けてますね。その甲斐あってか、いまでは前ほど朝起きるのが辛くなくなりました。やろうと思ったこととか、やらなければいけないことについては、自分なりにどうやったらできるだろうと考えて行動するようにしてますね。
キョウドウは前に進もうとする人を受け入れてくれる会社
キョウドウは基本的にはどんな人でも受け入れてくれる会社だと思います。社会人経験が浅い人とか、自分のように全くないという人でも、柔軟な会社なのですぐに馴染めます。ただ、わからないことを素直に聞くこととか、アドバイスを聞き入れる姿勢は大事ですね。そうした態度であれば、みんなが助けてくれると思います。あとは、計算に苦手意識がない人ですかね。いま自分が一番苦労していることなので(笑)それでも、周りの人に助けられて仕事ができているので、やり抜こうという気持ちがあればできると思います。
いまは比較的簡単な機械の製造を任せてもらっているので、今後はもう少し大きくて複雑な機械にも挑戦したいです。これから自分にも後輩ができるかもしれないですが、指導役などを任されれば、結構頑張って教えると思います。